住宅ローン 借り方と繰上返済の新常識 〜住宅ローンの常識を疑おう〜 本文へジャンプ
いま繰上返済をするべきか? 住宅ローンの常識を疑おう:4


 超低金利の現在、また住宅ローン減税のある現在、実は繰上返済しない方が有利なこともあるのです。

 例えば、年末に2000万円のローン残高がある場合、住宅ローン控除を1.0%受けられる人ならば、所得税から最大20万円の住宅ローン減税を受けられます。
 この場合、例えば100万円を繰上返済すると、減税額は19万円に減ってしまいます。言い換えると、100万円を繰上返済をしないことで、1万円の減税が得られる、つまり利率1.0%での運用が出来ているのと同じことなのです。
 住宅ローンの実質金利は「借入金利−住宅ローン減税の率」となります。
 この実質金利以上の金利で運用できるなら、繰上返済をしない方が得になります。

 例えば、変動金利で現在の適用金利が0.975%、住宅ローン減税が1.0%で満額還付される場合、実質金利は 0.975%−1.0%=-0.025% となり、マイナス金利になります。この状態は、繰上返済での利息軽減効果よりも、繰上返済しないことによる減税効果の方が大きいという状態ですから、運用などと考えなくても繰上返済をしない方がお得です。

 また、例えば、変動金利で現在の適用金利が1.075%、住宅ローン減税が1.0%で満額還付される場合、実質金利は 1.075%−1.0%=0.075% となります。この状態は、支払利息から減税の効果を引くと、実質的には0.075%の利息を支払うことになります。しかし、インターネット専業銀行の1年定期預金ですと、0.8%(税引き後0.64%)といったものもありますから、極めて安全な運用で0.64%の利息を得た方が、支払う利息0.075%よりも大きくなり、これも繰上返済をしない方がお得です。


 一方、固定金利で例えば3.0%ならば、住宅ローン減税が1.0%で満額還付される場合、実質金利は 3.0%−1.0%=2.0% となります。安全な運用で2.0%を上回るのは現状ではなかなか難しいですから、リスクのある運用を避けるのであれば、繰上返済をした方がお得です。


 しかし、リスクを取って投資をするのであれば、2.0%を上回る利益を期待することも可能です。
 もちろん、どこまでのリスクを取れるかは、その人の性格や資産状況によって違うでしょうから、むやみに勧めるわけではありません。
 しかし、高利回りの投資信託を使う方法は、個人的には検討の余地が大きいと考えています。

 例えば、2000万円、35年、固定金利3.0%で借り入れて、すぐに仮に100万円を返済額軽減型で繰上返済するとします。
 そうすると、毎月の返済額を圧縮でき、かつ、将来支払う利息を削ることが出来ます。毎月の軽減額は 3,849円、カットできる利息は約62万円です。
 さらに、軽減された差額分も繰り上げていけば、最終的には約173万円の利息をカットできることになります。(この金額は期間短縮型で繰上返済したときの効果と同じです。完済は3年短縮され32年になります。)
言い方を変えれば、100万円を返済することで約173万円のリターンを得るということです。

 つぎに、税引き後6.0%の分配金が期待できる投資信託を考えてみます。
 税引き後で6.0%ということは、毎月分配型であれば、100万円の投資で毎月5,000円の分配金が期待できることです。
 この分配金は再投資せずに受け取れば、ローンの返済に充てられますので、実質的な負担無しで毎月5,000円を繰上返済できることになります。
 (分配金は再投資をしないのがミソで、そうすることで得た分配金は確定したリターンになります。)
 (また、いざというときには、5,000円を繰上返済しないことで、収入増とすることも出来ます。)
 この確定リターンは、毎月積み上がっていきますので、時間とともに得られるリターンはどんどん増えていきます。
 さらに、この分配金で得た5,000円を返済額軽減型で繰上返済し、軽減された差額をさらに繰上返済することで、最終的には約142万円の利息軽減効果も得られます。完済までの期間は31年6ヶ月となるので、完済までの累積リターンは、5,000円×31.5×12+142万円=331万円です。これは、100万円を繰上返済したときの効果をはるかに上回ります。

 しかも、元本の時価は基準価額の増減で変化しますが、口数は変化しないので、分配金が出続ける限り、確定リターンは増え続けます。
 このリターンは、ローンが完済しても続きますので、将来の年金代わりにもなり得ます。

 もちろん、投資信託の分配金は減額される可能性もありますし、途中で強制的に償還される可能性もあります。
 しかし、分配金を再投資しないことで、得たリターンを確定していくことができます。複利効果はなくなりますが、その分リスクを減らすことが出来るわけです。

 では、6.0%もの配当利回りが本当に期待できるのか?という話になりますが、税引き後の配当利回りが10%を超える毎月分配型の投資信託も、いくつか存在するのが現状です。架空の話ではないのです。